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2009年4月29日 (水)

閣下と番兵。

「海軍ネタ」ついでに載せておこうっと。
大した話でもないんだが、昔どこやらで聞いた(読んだ)「海軍卿閣下と番兵」のやりとり。
若い番兵の元気の良さといい、50歳を超えた閣下の洒々とした言動といい、明治の日本海軍の明るい船出の雰囲気がチラッと伺えるようで個人的に好きな話です。

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明治六年、十一月。海軍卿閣下、門の傍(そば)までやつて来る。

番兵「おい、待てッ。待たぬかッ。」
閣下「(立ち止まりて)何でエ、おいらのことかい。」
番兵「然様。」
閣下「一体何だエ。」
番兵「貴様、送り券は持つて居るかッ。」
閣下「ほう、送り券かいな。」
番兵「門外に物品を持ち出す際は送り券が必要である。其の荷物は何であるかッ。」
閣下「あゝ、此(これ)か。此のことかい。」
番兵「許可なく寮内より物品を持ち出すことは罷り成らぬ。送り券なくば貴様、此処を通れぬものと心得よ!」
閣下「さうか、さうか。そンならチト待つてゐておくれな。」

閣下、玄関まで引き返す。

判任官「おや、閣下。如何なさいましたか?」
閣下「いやサそれがな、門前で番兵に呼び止められてよ。なんでも送り券がなけりや此処を通さぬとか言ふのさ。」
判任官「(驚きて)番兵奴(め)が斯様(かやう)な事を吐(ぬ)かしたわけでありますか。」
閣下「ハハハ、そりやあもう、てえへんな剣幕ヨ。そこでだ、お前さん、わりいが其の送り券とやらを書いちやあくれねえか。」
判任官「閣下、貴方が送り券なぞお持ちになる必要は御座居ませんよ。あの番兵奴、無礼千万である。捨て置けぬ。」
閣下「まァ、さう怒りなさんなテ。彼奴(きゃつ)はあゝして手前の務めを果たしてるまでのことなんさ。なかなかしおらしいぢやねえかい。おいらを咎めるも道理だ。兎に角送り券をおくれよ。」
判任官「然し、それでは閣下が・・・。」
閣下「おいおい、おいらのこたァいゝんだよ。つべこべ言はずに早えとこ書いておくれな。」
判任官「承知致しました。・・・どうぞ閣下、此方(こちら)をお持ち下さい。」
閣下「すまねえな。」
判任官「では、其処までお送り仕ります。」
閣下「うん。」

番兵、怪訝さうに二人を一瞥。

判任官「コラッ、海軍卿閣下のお通りであるッ。捧げーッ、銃(つつ)ッ!」
番兵、大慌てで捧げ銃*1の敬礼。
閣下「送り券、此処に置くからな。お前さんは、てえしたべらぼうだ。まァ、その調子でしつかりおやり。」

閣下、涼しい顔で歩み去る。判任官、敬礼。

*1捧げ銃: 軍隊の敬礼の一。銃を両手でからだの中央前に垂直にささげ持ち、相手の目に注目する。また、その号令。
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「明治6年、時の海軍卿閣下は、兵学寮を見回りに行った帰り、門のところで強い口調で呼び止められる。閣下を呼び止めた番兵は未だ閣下の顔を知らない。閣下はこざっぱりとした洋装だが軍服は着用していない。番兵は閣下に、送り券がなければ物品の持ち出しを許さぬと厳しく咎めたそうだ。すると閣下はただ「そうか」と言って玄関まで引き返し、判任官に送り券を書いてもらう。判任官は閣下と一緒に番兵の待つ門の傍まで来ると、大声で『海軍卿閣下のお通りだ』と告げる。番兵は驚き、慌てて捧げ銃の敬礼。閣下は送り券を差し出すと番兵の職務への忠実さを褒め、何事もなかったかのように去っていった」・・・という、ただそれだけの話。
台詞等詳細は私の勝手な想像。(笑)歴史的仮名遣いっぽくしてあるけど、明治っぽくしてみたかっただけ。(←阿呆だ。)
実際閣下と番兵、判任官との間にどんなやりとりがあったのか気になります。

あ、もうお判りかと存じますが、明治6年と云えば海軍卿は初代、勝安芳さんの頃です。
豪胆さといい、人を食った態度といい、いかにも勝先生だ・・・ということで、台詞回しを「それっぽく」しておいた。

この話、残念ながら元ネタが判らないんですよね。誰か御存知の方、教えてくれい。

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コメント

いやぁ、いいお話しですネ、
面白く読ませていただきました。
麟さんだったらありえる話しです。 
私は江戸っ子ではナイですが、大好きです、麟さんは。

元ネタがあるのですか?
探ってみたいです。

投稿: 旅の武芸者 | 2009年9月 3日 (木) 12時35分

旅の武芸者さん、はじめまして!
このようなヒソッと存在する小さなブログを見つけて下さいまして、ありがとうございます m(_ _)m
麟さん好き(!)の方に読んでいただけるなんて、感激です^^ あ、因みに私も江戸っ子ではありません(´∀`)

私もこの話の元ネタが気になって気になって仕方がないのですが、未だに元ネタが判らないのですよ^^;「いかにも麟さん」という感じが、めっぽう素敵ですよね。元ネタが判明しましたら、またブログのネタにいたしますので、よろしくお願いいたします^^

もし宜しければ、またチラッと遊びに来て下さいませ。お待ちしております♪

投稿: りんぞぅ | 2009年9月 4日 (金) 00時11分

「小さな」とはご謙遜。
大きさを感じます。

ある作家の、
「善人」には改革なんゾできない、
改革を断行できるのは、「大悪人」にのみ可能である云々、というエッセイを読んだことがあります。
大悪人とは当然犯罪者では当然なく、
既存の「善」に対するという意味を込めた「悪」人である。
まさに吾らが、勝っつぁんでしょう。
稀代の「大悪人」ですね。
こういう人だからこそ、日本を外国の介入なしに、
江戸城無血開城なんゾ成し得たのでしょう。

いまの政界、小さな善人か悪人ばかりがあふれているような気がしますが、いかが?

これからも良いブログ発信続けてください。
応援します。

投稿: 旅の武芸者 | 2009年9月 6日 (日) 11時36分

旅の武芸者さん、こんにちは^^
コメントありがとうございます。しかも応援のメッセージまでいただけるだなんて感無量です(^O^)

>改革を断行できるのは、「大悪人」にのみ可能である云々
そんなことをおっしゃった方がいらっしゃいましたか!
確かにそういう意味では我らが勝つぁん、「大悪人」ですねえ。(自称・大奸物大悪人大不忠ですし。笑)

>今の政界
私の最近の口癖は「今の日本には政治家がいない」「今の財界人の中に一国の経済に対して責任を感じている人間がどれほどいるか」なのですが、私もやはり「小物」ばかりがのさばっているという印象を持っております。
偶に「大根一本の値段を気にしていたら大きな仕事ができない」というような寝言(失敬)を言っている自称「大物」政治家もありますけど、彼らは大根の値段に象徴される社会の問題に気付かないボンクラであるという点では、大根の値段「だけ」を気にして騒いでいる「小物」と同じである、と私は思うのですが・・・言い過ぎでしょうか(笑) 長々と語ってしまいました^^;

投稿: りんぞぅ | 2009年9月 7日 (月) 23時12分

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