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2009年6月12日 (金)

斎藤栄「横濱太平記」(徳間文庫)

斎藤栄「横濱太平記」(徳間文庫)
一気に読破。

最初の頁を開いてみると、「おッ、字がクッキリ太めだぞ」。これは読みやすそうだ。久々に最初の1頁から真面目に読む気になった。

で、今日もネタバレ気味に感想をメモる。

内容はミステリータッチの横濱港町繁盛秘話。カテゴリーは歴史小説ではなく時代小説。舞台は幕末のかながわ宿。実在の人物も絡んだりするけど、基本は創作だ。
オトコマエのタフガイ犬山蓮次郎と、その愛妻お静は、時代劇のヒーロー・ヒロインの手本のような夫婦(めおと)である。お静サンは賢く、奥ゆかしく、勘が鋭く、しかも豪邁な実にイイ女だが、作品に花を添えているだけの存在ではないというのがポイントだ。魅力的な登場人物に、頭が痛くならない程度のミステリーの要素、抑制の効いた濡れ具合(!)。これは時代エンターテイメントの王道かもしれないぞ。

35頁まで読んで思わずニヤリ。黒幕(?)の存在がここで示唆される。--- 仕掛けの規模、人脈から考えると、佐藤与之助サンどころか、もっとヤバいのが一枚咬んでるんじゃないか。これって、まさか…?

そのヤバい人物(艶福家の貴人てことになってる。恐らく30代後半)は物語の進行とともに匿名のまま存在感を増していく。仮に「ネコ」と呼んでおこう。何故かはナイショだ( ̄b ̄*)
このセッカチで奔放な仕掛人、大規模建造物の図面を引いたり船を乗り回したりと大活躍なのだ。その上妾を4人も囲って大忙し。そう、ネコたん(仮)は「デキる男」なのである。

彼は蓮次郎サンお静サンの犬山夫妻のために用意された舞台のゲストではなく、実は舞台自体を動かしていた。気味の悪い男だが、実在するネコたん(仮)はこの後その気味の悪さを全国規模で展開していくことになる。
…尤も実在の彼は当時はまだ貴人などではなく下っ端役人の筈なのだが、まぁ貴人で顔も隠してるって設定のほうが、この話の都合上は面白いか。

犬山夫妻らの奮闘で一件落着となるが、スピード感溢れるこの物語のエピローグは、ネコたん(仮)の怪気炎に始終する。作者の斎藤先生は彼の口を借りて乱世を生きる現代人に伝えたいことがあった訳なんだにゃ。(にゃ…って。爆)

ネコたん(仮)は国土と国民を救うために何をすべきか考えて気が付いたと云う。
「おいらっちはな、船乗りだ。船に乗って荒海に漕ぎ出せば、自分だけ助かろうとか、死ぬとか思っても仕方がねえのよ。」
挙国一致で敵に対抗せねば国は滅びる。今は敵を知る必要がある。だから歯痛に耐えて(新説。笑)海を渡った。
「…元気に生きるってことは目先のことだが、これを除いて、なすべきことは何もねえ。…おいらっちはとにかく、ここまで生きてきた。おめっちも同じよ。おれの信念てえものは、それだけだった。」
人ならば元気に生き抜くこと、社会なら真に平和であること。突き詰めればそれが一番大事だ。身も蓋もない正論を吐くとこが、如何にもネコたん(仮)らしい。

あれから150年。今の日本人はどうだろ。日本の社会は、どうだろ。困難な時代だからこそ見失っちゃならないものもあるってことだにょ。

…しかし、ネコたん(仮)。あなた案外人気者なのかい? 食わせ者じゃなくって。

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追記:
時代考証はヤングアダルト向けの「凜九郎」なんかのほうが余程しっかりしています。(というより、吉橋先生は相当念入りに時代考証をされたと思う。)「横濱太平記」は万延年間、「凜九郎」は文久年間と殆ど同時代の話なので、比較したくなってしまうのだ。
まぁ前者はネコたん(仮)以外の実在の人物が殆ど絡んでこないのに対し、後者は「勝さん」や「安藤老中」以外にも沢山の人物が絡むので、キャラクター設定もまったくの創作というワケにはいかなかったということもあろう。
自分は「ただの時代小説なんだから話の都合上どんなキャラ設定をしようと関係なくね?」と思うのだけど、こういうの不満な人もいるんだろうな・・・と思った次第。

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