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2009年11月21日 (土)

『夢酔獨言』を読む会②解読用年表&感想文

「夢酔獨言」を読む会①を更新してから、随分時間が経っちまいました。

何だか纏まった時間が取れなくって滞っていた年表作成作業ですが、何とか完了したんで貼り付けておきます。

Nenpyouthm
☆ もし文字化けしていたらブラウザの「メニューバー」から「表示」→「エンコード」→「日本語(シフトJIS)」を選んで下さい。
それで駄目なら、お手上げだわ^^;

感想文(長い。怒):
勝小吉「夢酔独言」(教育出版)

2度目の出会い
作者が「夢酔独言」なる奇怪な本に出会ったのは、もう15年程昔のことになろうか。言語研究家の間でも珍重されていると云う伝説の自叙伝。大喜びで読み始めたのは良いが、この本、実に読みにくいのである。旧仮名遣いや古語のせいだけではない。誤字脱字は多いわ、平仮名ばかりだわ、無茶苦茶なのだ。「えい勇ごうけつとおもつたゆえ」なんて書いてあっても、「英雄豪傑と思つた故」と自分で翻訳せねばならない。大部分が素敵な口語体で書かれているのは解るから、読めたところくらいは理解できると思ったが、当時の風俗や文化についての知識がまるでないこともあって話の内容がなかなか繋がらない。最後まで目を通したが、どうもそれだけで終わったようである。未成年の私に理解できたことは、夢酔先生は無茶苦茶な人生を送った豪傑だ、ということだけだった。
で、大人になってだいぶ経ったある日、この「夢酔独言」をもっと「簡単」に読める本が出ていることを知る。それが、本書である。子供でも読めるようにちゃんとルビまでついている。註の内容が「これ、社会の先生じゃなくて国語の先生が書いたな?」と思われるような明らかに怪しい部分もあったりするのだが、まぁそれくらいはご愛敬である。

不思議な文体
つべこべ論じるまでもない。ちょっと読めば解るほど、魅力的な文体なのだ。坂口安吾も大絶賛しているという、強烈なオリジナリティーである。(実はまだ「安吾史譚」読んでないんだよね・・・いつか読んでやろうとは思っているんだが。)

親子って似るもんだ
本書の著者・夢酔勝左衛門太郎惟寅は筋金入りの不良旗本だ。剣も喧嘩も滅法強かったから、なおさら始末が悪い。喧嘩と道場破りに明け暮れ、剣術の他流試合の元祖になってしまうばかりか、「さむれえ」の本分を離れて下町の大元締におさまってしまう。第一子である長男が生まれたときは実家の座敷牢の中だ。子供は大切にした夢酔先生だったが、三歳になったばかりの倅に家督を譲って隠居しようとしたりする。
この倅が勝麟太郎義邦、後の政治家・勝海舟だ。不良旗本の父と大規模政治家の息子。この親子は何もかもがそっくりである。本書がわざわざ「氷川清話」(流布本のほう)の一部を載せているのは、その談話の奔放さ、歯切れの良い江戸弁の小気味よさ、それからストーリーテラーとしての才能の中に、本書と同じ香りを感じ取ってもらいたいとの配慮かもしれない。本書を読む限り夢酔先生は「義邦は俺と違って真面目で立派だ」と思っているようだが・・・どうやら先生は大きな勘違いをしていなさるようだよ。
夢酔先生の機転、潔さ、豪放磊落な人柄、人助けを喜ぶところ、金のやりくりの上手さ等々は(それと、余計だけど本格的下戸で滅法女好きなとことかも)、確実に麟さんへと受け継がれている。「夢酔独言」にある喧嘩や大芝居の話と、「氷川清話」にある政治絡みのバカでかい話は、読み比べれば読み比べるほどその本質的部分において近いものに思えてくるから不思議だ。
目の前に転がっている面白いことを逃さぬように一日一日を精一杯愉しみ、下町の人情の中こそがおのれの世界だった「下町の大親分」夢酔先生。広い世界を手に取るように眺め、愛おしみ、自分が歴史という大きな流れの中にいることを片時も忘れなかった「大政治家」麟さん。二人に違いがあるとすれば、まぁそんなところだろう。たいして文章力のない自分が、これ以上論じようとするのは野暮天であろうから、ここらでやめておく。
しかしまぁ・・・つくづく、親子って似るもんだ。

奇禍
この親子の話をするなら、触れずにいてはバチが当たりそうな話題がある。
「犬」である。人の世に怖いモノなど何もない麟さんにも怖いモノがあったという話である。「おれは天下に恐ろしいものを二人見た」という有名な談話の話ではない。横井先生や西郷さんを「恐い」と言っているのは、笑い話の「まんじゅう恐い」みたいなもんである。麟さん一流の「レトリック」である。
江戸は「犬のクソ」が多かったそうな。犬が往来をウロウロしているのが普通だったからではないかと思うのだが、どうだろう。麟さんは、強盗や辻斬りではなく野犬が恐かったらしい。
夢酔先生が自分の孫や曾孫のために書き残したはずの「夢酔独言」は明治時代には孫や曾孫以外の人間の目に触れてしまったようである。(確か「旧幕府」なんかにも納められていたような・・・。)いずれにしても「ある日けいこにゆく道にて病犬に出会ってきん玉をくわれた」というくだり、初めて読んだ人はビックリしたことだろう。まぁ、こんな大事故に遭ってトラウマにならないほうがおかしいのである。なお、やられた場所が場所なので麟太郎くんの将来について余計な心配をしたくもなるが、彼の子供を授かった女性が何人いるかさえ実は判っていないというのだから、心配するだけ無駄である。彼は寧ろ暴走気味だ。

大河ドラマ「夢酔独言」(仮)を作りゃあがれ
夢酔先生は「幕末」を待たずに泉下の客となった。日本の歴史の大きな流れの中で、この先生が何をしたかと言えば、何もしていないと答えるより仕方ない。それでも、この先生は偉大である。理由を述べるまでもない。俊異卓抜たる怪政治家・勝海舟の父であるということだけですべての説明がついてしまうからだ。
こんな人をNHK大河ドラマの主人公にするわけにはいかないかね。本書に書かれた喧嘩上等無頼放蕩抱腹絶倒(←一応韻を踏んでいる。爆)な幼年時代からの話を、やたら丁寧に、しかも大真面目に描くのよ。「黒船前夜」の江戸の情緒たっぷりに。
年上の甥・精一郎さん(=若き日の剣聖・男谷信友)たちと連んで路上で大立ち回りをやった話なんか、実写化すると面白いぞ。それ以外にも、就活に失敗する話とか、大芝居を打ってトラブルを解決する話とか、エピソードには事欠かない。後半、息子が生まれてからは「破天荒な父性」とかをテーマにしようかね。そんで、新時代を予感し夜な夜な洋書の風呂敷包みを抱えて蘭学修行に行く息子のヨレヨレの着物の後ろ姿を見送りながら「息子よ、荒波を超えてゆけ」なんて呟いたりするわけよ(爆)。

余談だけど、他に作ってほしい大河ドラマは、鉄道の父・佐藤与之助が主人公のヤツ。この人は、「天保の三剣豪」のひとり、島田虎之助先生に剣術を習いたかったはずなのに、何故かその愛弟子の勝麟太郎から洋学を習うことになった庄内人ですわ。(なんか説明を端折りすぎてる気もするが・・・。)それから横浜開港に並々ならぬ功績のある人でもある。こういう与之助さんみたいな人を主人公にすると地味~に感動的な話が出来そうなんだがなぁ。2010年の大河(リョウマだったな。)で与之助さんが登場しなかったりしたら、泣いてやる(笑)。

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