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2010年2月20日 (土)

阿川弘之・半藤一利「日本海軍、錨揚ゲ!」(PHP文庫)

阿川先生&半藤先生の海軍通(東大文学部の先輩後輩というご関係です)による面白対談集。
 

題名を見て、ひょっとしてこいつは自分のためにあるような本かも!と大興奮して手に取った。阿川先生の気の利いた歴史的仮名遣いの素敵な「まへがき」でも触れられているが、米海軍のマーチ“Anchor's Aweigh”(号令詞「錨揚げ!」の意)といえば、私の定番のアラーム音だったりするからだ。私の朝は出港のマーチで始まるのである。
まあ、それはともかく、読んでみると実に素敵な本なのだ。当方軍人さんに詳しいわけでもなく戦艦マニアでもなく軍服萌えな趣味もないが、日本海軍についての専門的知識などまるでなくても面白く読める内容になっている。雑学的話題や裏話が満載。日本海軍や軍人さんが、とても身近に感じられること請け合いだ。
 
私は好きなこと(もの、人)を語るのが苦手である。
その良さを伝えようとするとき、何か客観的な要素を探そうとしてしまい、その結果好きだという感情は押し殺されてしまうかららしい。だから結局、「愛」は伝わらない。
しかし、阿川先生と半藤先生は違う。
本書も遠い憧れや懐旧、嘆き・・・様々な思いを込めて海軍の思い出と歴史とが愛情たっぷりに語り尽くされるのだ。が、だからといって客観性を失うことはない。情に流されず、それが自壊してゆくさまをも、しっかりと見つめて語っていらっしゃる。
 
目先の成果にとらわれて理念を忘れ、軍艦の舵取りはできても国家としての大きな方針を示すことの出来ない硬直化した閉鎖的な組織、人間の集団であることを忘れ、その最も大切な要素である「人」を武器弾薬のひとつとしてしか見られなくなった組織は、やがて崩壊する。前を向くことも先を見ることも忘れ、視野の広がりも視点の深さも無用のモノとなった組織が何かにしがみついた挙げ句、現実というものがどんな時代の流れに乗っかって運ばれてゆくのか見誤り、ついには見失ってしまった悲劇。その中で人として優秀な、愛すべき人たちを失ってしまった事実・・・。
 

こんな言葉があった。
 
「海軍とは単なる戦闘集団ではない。
生きた人間の組織であり、それ以上にひとつの文化なのである。」
 
おそらくはロイヤル・ネイビー(英吉利海軍)の伝統に通ずるであろう、海軍というモノの理念のひとつである。
薩摩の山本権兵衛がまだ海軍見習いだった頃、旧幕府海軍出身の海軍卿、勝海舟にビシビシ叩きこまれた基本理念のひとつがコレだという。(えー、山本さんは1箇月ほど勝先生んちに居候していたことがあり、そのときに英吉利流の基礎教育をみっちり受けているんですな。閣下万歳。)
 
日本の軍隊の上層部は、兵隊さんや国民が文化を共有する生きた人間の集団であることを忘れてしまったんじゃないか。日本海軍の辿った運命、これ自体が謂わば彼らの遺産である。それを生かさなければバチが当たるぞ、と思わずにはいられない。「賢者は歴史から学ぶ」とは良く言ったもんだ。

 
以下、雑感。
 
■海軍心得の「五分前」ナントカの正体が判明。正しくは「五分前精神」だそうだ。どっかの社訓にありそうな「五分前主義」って言葉より100倍素敵だ。
■「海軍大学校入試問題」の話。「3を3回使って0から10までの数式を出せ。あらゆる記号を使ってよい。」ってヤツね。実際やってみました。一応文系のオイラでも延べ2時間ほどかけて何とか0から9までは出来たんだけど、10は全然無理でした。(章末の解答例を見たけど、10は反則技だった。笑) あ、高等学校の「数学A」程度の知識があれば解けるよ。
 
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この本を読み終えたのは実は今年の正月頃。
感想文を書くのが面倒でズルズル延ばしてたら今頃になっちまった。まだ数冊分溜まってます。 

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