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2010年7月 8日 (木)

週刊マンガ日本史:福澤くん。

週刊マンガ日本史:福澤くん。
丸山眞男って学者がいる。福澤諭吉研究の大家…と云うか、人間・福澤諭吉を「独立自尊」の精神を掲げた偉大な啓蒙思想家として神輿に乗せてしまった一種の功労者である。
 
自分は福澤くんは好きじゃないけど「学問ノスゝメ」は全部読んだ。文章は説得力があって読みやすい、つまり上手である。危うく騙されるところだった・・・って人も大勢いるんじゃないかな。内容もこれから世に出るために学問を志す少年少女への威勢のよい餞の言葉としては悪かない。…オノレらも勉強せんかったら阿呆で貧乏になってまうで、愚民の仲間入りやで、せやから、あないな阿呆どもと一緒にならへんように勉強しいや。福澤くんはそう言って若い者を励ますのだ。
 
男尊女卑を憎むのはオッカサンの苦労を見てきたから。努力した者、知識のある者が浮かばれない事実を憎むのは、父の代からそれで詰まらない思いをしたから。彼の理論はいつも明快だ。それでいて彼は不平等自体は否定しない。「あいつら阿呆やさかい勝手に貧乏になったのに飢饉になると徒党を組んで強訴したりしよってなあ、恥知らずな上に法律も恐れんのや。こないな阿呆連中は理屈を言うても解らへん。武力で鎮圧すれば十分やろ」「人間も一人前にならな深く国のためを思うて行動せえへん、財産も命もよう捨てん。インドやらシナやらの土人を見てみい」みたいなことを平気で書いちゃう。そもそも「天は人の上に人を造らず」っていう有名なクダリが「・・・造らず。」ではなく、「…と言えり」(=って言葉があるやん)で終わってるあたりが福澤くんの「上手い」ところだよなあ、とイヤミ抜きに私は思うのである。
 
彼は間違いなく頭のよい人だし、フツーの武家(支配者)階級の出の人らしく振る舞い続けるところが人間臭くて親しみやすいところなのに、丸山眞男手製のフィルターがかかった諭吉像が満開な現状が残念でならないや。別に福澤くんは好きではないが、丸山眞男の神輿の上の諭吉様より本物の諭吉さんのほうが余程面白いだろうに。
 
なお自分が福澤くんをイマイチ好きになれない一番の理由が「痩我慢の説」(旧幕臣の勝さん&榎本さんを名指し)なんだけど、アレもポイントは「幕臣のくせに、侍のくせに」って視点が見えるとこなんだ。国家トップクラスのテクノクラートも皇室からナラズモノまで付き合いがある政治家もこの際関係ないのだ。何やオノレら徳川の侍の癖に薩長政府に出仕かいな。しかもあの法螺吹きは戦わんと主君の城をあっさり明け渡してるんやで。…いろいろ理屈は捏ねてみたが結局福澤くんが一番言いたかったのは、そんなことだったのかもしれない。(因みに当時は福澤くん自身が嘘吐き法螺吹き扱いされていたことをお忘れなく。)
 
別に「痩我慢」みたいなのもアリだとは思う。ただ少なくとも自分は、福澤くんからこの作文への返事を催促されたときに、「読みましたけど忙しいので返事は待って下さい」と言ってそのまま放置した釜さんの江戸の武士らしいアッサリ感や、「俺が自分で決めてやったことを他人がどう評価しようと自由だから、別に公開してもいいよ」と返事をした麟さんの懐の深さのほうに惹かれてしまう人間であるらしい。二人とも言い訳もしなけりゃ居直りもしない。十分に徳川の侍らしいと思うんだがねえ。
 
(あ、肝心なマンガの感想を書いてねえや。笑)
 
次号の主人公は麟さんやリョウマと仲良しだった西郷どん。内容は主に「西南の役」。
オマケの人物カードは没年順に並んでるんだが、今号で遂に後藤さん陸奥さん(1897年没)が相次いで亡くなり、今号本編でも活躍したジョン・マン(=中浜万次郎さん。1898年没)が亡くなった。…てことは、来週で福澤くん(1901年没)も麟さん(1899年没)も死んじゃうんだな。オマケのほうが一足早く激動の20世紀に突入か。

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